人事はヒトゴトか?

組織論、人材開発、人工知能に関するトピックについて書いていく。学術的観点と人事の実務の両方の視点を大切に。

ダイバーシティ

 現在、私はアメリカの大学院で人材育成と組織論を学んでいます。この1年あまりで履修した講義の中でよく見かけたのが、「ダイバーシティ」という言葉です。直訳すると「多様性」という意味で、民族・性別・年齢・職歴などにおいて多様なバックグランドを持ったメンバーで組織を構成することを指します。ダイバーシティが進んだ組織は、多様な視点から色々なアイデアを生み出すことができるため、社会環境の変化に適応しやすく成長力があると言われています。ダイバーシティが進んだ企業として、P&G、ディズニーなどが有名で、こうした企業の多くはグローバルな事業展開をしています。

 アメリカでのダイバーシティはビジネスだけでなく、地域社会にも見られます。私の住む街には様々な民族コミュニティがあり、移民向けの住居や教育などのサポートや、各国の文化を体験できるイベントの開催などが行われています。全米レベルで見ると、2008年にアフリカ系アメリカ人のオバマ大統領が選ばれ、今年の大統領選挙でも女性のヒラリー・クリントンが民主党で選出されたことも、ダイバーシティの進展を表す出来事と言えます。

 一方でダイバーシティは一朝一夕に実現せず、たゆまぬ努力が求められます。組織および社会には多様な人材が活躍できる制度・風土をつくることが求められ、その過程で一時的な非効率や抵抗勢力による反発といったコストも発生します。現在、日本でも政府による女性活躍推進など、ダイバーシティに取り組む動きが活発になっています。こうした動きを一過性のブームで終わらせず、継続的に取り組むことがダイバーシティを進展させ、成長力のある日本企業と活力のある日本社会をつくることへとつながると考えます。